ドローンで農薬をまくのに国の承認が要らない場合|教則第5版で追記された要件

「ドローンで農薬をまきたいのだけれど、国の許可は要るのでしょうか」

但馬でこのご相談が増えています。田んぼや畑、山の下草に薬をまくのに、人が背負って歩くのは大変な仕事です。

結論から申し上げますと、一定の要件を満たす場合には、承認の手続きが要らなくなります。 ただし「誰でも、どこでも、すぐに」という話ではありません。要件のほうがむしろ本題です。国土交通省の文書に書いてあることだけを順にご説明します。

2026年7月14日から、教則に例外が書き加わりました

ドローンの学科試験の範囲になっている国土交通省の「無人航空機の飛行の安全に関する教則」は、2026年7月7日に第5版が公布され、7月14日から適用されています。この第5版で書き加わった項目のひとつが、農薬散布の例外です。

教則の第3章には、こう書かれています。

> 無人航空機を飛行させて農薬等の空中散布などを行う場合であって、航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定で定める要件を満たす場合には、夜間飛行、目視外飛行、第三者から30メートル以内の飛行、危険物輸送及び物件投下に係る飛行の承認手続き等が不要である。

少し順を追います。そもそもドローンは、物を落とすことが原則として禁止されています。教則には「物件の投下には、水や農薬等の液体や霧状のものの散布も含まれる」と明記されています。つまり農薬をまく行為は、それだけで「物件投下」に当たります。さらに農薬は、種類によっては危険物にも当たります。どちらも本来は1件ずつ承認が要る飛行です。

その2つを含めた5つの承認が、要件を満たせばまとめて要らなくなる。これが今回の例外です。

承認が要らなくなる要件

「一定の要件」の中身は教則には書かれておらず、国土交通省の通達「航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行の取扱い」(令和8年3月23日制定)にあります。主なものを挙げます。

承認が要らなくなる3つの前提。1 機体は第一種または第二種の機体認証を受けたもので、夜間や目視外などでは総重量25kg未満。2 人は一等または二等の技能証明を持つ操縦者で、夜間は昼間限定の解除、目視外は目視内限定の解除が必要。3 場所は自分や関係者が所有・管理する農地または森林で、地表・水面か農作物の上端から4m以下
機体・人・場所の3つがそろって初めて承認が不要になります

機体について

第一種または第二種の機体認証を受けた機体であることが前提です。そのうえで、危険物を運ぶなら「危険物の輸送に適した装備」、物を落とすなら「不用意に物件を投下する機構でないこと」、人から30mを確保できない飛行ならプロペラガードなど危害を軽くする機能、夜間なら機体の向きが分かる灯火が求められます。

夜間飛行・目視外飛行・30mを確保できない飛行では、総重量25kg未満という条件も付きます。大型の散布機は枠に入らない場合があります。

操縦する人について

一等または二等無人航空機操縦士の技能証明が必要です。夜間に飛ばすなら昼間限定の解除、目視の外へ出すなら目視内限定の解除まで要ります。

さらに農薬散布については、危険物でない水などを使った訓練を5回以上行っていることが求められます。

つまりこの例外は「資格が要らなくなる話」ではありません。資格があることを前提に、1回ごとの承認申請を省けるようにした仕組みです。

場所と高さについて

飛ばせるのは、関係者が所有または管理する「現に農業の用に供されている農地」または「現に林業の用に供されている森林」の区域内で、高さは地表・水面または農作物の上端から4m以下です。多数の方が集まる催しの場所の上空は対象外です。

飛ばし方について

夜間飛行と目視外飛行は自動操縦で行うこと。ジオフェンス機能と、リターントゥホーム・自動着陸などのフェールセーフ機能を使うこと。第三者の上空では飛ばさないこと。5m/s以上の突風があれば中止すること。飛行経路の下に第三者の物件がなく、補助者の配置などで人が入らないよう管理すること。飛行マニュアルにあたる規程を作って守ること。

まくもの自体にも条件があり、農薬取締法の登録を受けた農薬、または肥料の品質の確保等に関する法律に定める肥料であることが求められます。

承認が要らなくなっても、残る手続き

ここが見落としやすいところです。

承認が要らなくても残るもの。1 機体の登録は100g以上の機体に必要で免除の定めはない。2 飛行計画の通報は夜間・目視外・30m未満・物件投下が特定飛行に当たるため飛ぶ前にDIPSで通報する。3 飛行日誌は特定飛行をするときは携行が義務で点検・整備の記録も残す
承認が省けるのは「飛行の方法」の部分だけで、登録と届出は残ります

通達には、人口集中地区の上空・夜間・目視外・30m未満・危険物輸送・物件投下の飛行は特定飛行に当たるため、飛行計画の通報と飛行日誌は引き続き必要だと書かれています。

機体の登録も残ります。教則には「全ての無人航空機(重量が100グラム未満のものは除く。)は、国の登録を受けたものでなければ、原則として航空の用に供することができない」とあり、農薬散布を免除する記述はありません。

機体を紐でつないで飛ばす係留の場合は、危険物に当たる農薬の散布について危険物輸送の承認が引き続き必要だと、国土交通省の解釈文書にあります。

また、空港等の周辺、高度150m以上、人口集中地区の上空、催し場所の上空といった空域についての許可・承認は、この例外の対象として書かれていません。 そのまま必要とお考えください。

但馬で始めるなら、この順番です

ここまでをまとめますと、順番はこうなります。

  1. 機体を選ぶ — 第一種または第二種の機体認証を受けたもの。夜間や目視外を考えるなら総重量25kg未満のもの
  2. 機体を登録する — 100g以上はすべて登録が必要です
  3. 技能証明を取る — 一等または二等。夜間や目視外まで使うなら限定の解除も
  4. 訓練の記録を残す — 農薬散布は水などでの練習が5回以上
  5. 規程を作る — 飛行マニュアルにあたるもの
  6. 飛ぶ前に通報し、日誌を付ける

3番の技能証明が最初の関門になります。実地試験はスクールの講習を修了すると免除されますが、学科試験は誰でも受けます。 50問を30分、8割が合格ラインです。2026年7月14日以降の学科試験は、この農薬散布の例外を含む教則第5版の範囲で出題されています。

費用の補助は、市町や県の制度が年度ごとに変わります。朝来市にはスマート農業を対象にした補助金がありますが、農薬散布ドローンが対象になるかは要綱に明記がありません。お住まいの市町の担当課か商工会にご確認ください。 当社は申請の代行はしておりません。

学科試験の勉強と、ドローンの講座について

e-educationでは、二等無人航空機操縦士の学科試験対策アプリをお出ししています。教則の範囲から出題される形式で、合間のお時間に繰り返し解いていただけます。第5版で変わったところも反映を進めています。

また、学科の内容を一緒に読み進める講座も承っております。「教則を開いてはみたけれど、どこが試験に出るのか分からない」という方に向いています。オンラインでも対面でも、1回60分から承ります。受講料は1回4,000円(税込4,400円)で、テキスト代が含まれます。豊岡市内への出張費はいただいておりません。市外の但馬圏内は別途ご相談ください。

「まず何から手を付ければよいか」というご相談も歓迎です。アプリの詳しい内容は当サイトのドローンアプリのページ、お問い合わせはお問い合わせフォームからお願いいたします。お電話でも承ります。

出典

  • 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版」(令和8年7月7日公布・7月14日適用)第3章 3.1.2(2)3)d、3.1.2(2)2)e・f、3.1.2(1)2)、3.1.2(3)2)a・b https://www.mlit.go.jp/common/002010809.pdf (2026-10-30 確認)
  • 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則 第4版からの変更点」 https://www.mlit.go.jp/common/002010810.pdf (2026-10-30 確認)
  • 国土交通省「航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行の取扱い」(令和8年3月23日制定・国空無機第338898号)3「飛行の要件」、5(1) https://www.mlit.go.jp/common/001990796.pdf (2026-10-30 確認)
  • 国土交通省「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」(最終改正 令和8年4月1日)4(1)・4(2) https://www.mlit.go.jp/common/001303820.pdf (2026-10-30 確認)
  • 国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」内「農薬等の空中散布に係る飛行の承認が不要となる場合について」 https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html (2026-10-30 確認)

※ 本記事の要件は、上記の国土交通省の通達と解釈文書の記述に基づいています。航空法施行規則第236条の82第1項第2号の条文そのものは、e-Gov法令検索から本文を取得できなかったため未照合です。実際に飛ばされる前に、最新の通達と、お使いの機体のマニュアルをご確認ください。

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